カモネギFX

株式投資、FXデイトレード、古書収集などをド田舎で行っている資産運用ブログです。

2015年09月

なんでも起こりうる世界 その12

戦争でバタバタと人が死んだり、仕事も少なくて非常に貧しかった時代というのは、そんなに昔のことではありません。





『ゲゲゲの鬼太郎』を描いた漫画家の水木しげる先生は、南洋のラバウルでの戦争で左腕を失うも奇跡的に生還し、極貧の中でも漫画を描き続けて、今日の地位を築くに至りました。


『ゲゲゲの鬼太郎』は当然私も子供の頃TVアニメで見て知っていましたが、水木しげる先生がこういう経歴の人だとは、最近まで全く知りませんでした。


ゲゲゲの女房 (実業之日本社文庫)
武良 布枝
実業之日本社
2011-09-09



こちらはNHKの連続TVドラマの原作にもなったそうですが、私はまだワープアに転落する前で、一年の半分くらいは中国に出張に行って働いていた時期なので、全く記憶にありません。


水木しげる先生も奥様も高齢ですがご健在ですので、大昔とはいえない戦前戦後の日本が経た歴史がいかに激動のものだったかはこの二人の自伝的書籍を読むとよく分かります。


一方、高度経済成長期以後の日本は、あまり大きな変化を経ておらず、それ以後に成長した人が、仕事や食べ物が簡単に手に入ることに何の感動を覚えないのも無理はありません。


それがあって当たり前の社会しか知らないからです。


しかし、労働賃金の劇的な向上を経た今では、働ける健康な体さえあれば、何度でも再起可能というのは、動かしがたい事実です。


真面目に働いても食べるものや着る物が買えないという格差は、現代日本には存在しないからです。


つまり、歴史的な視点を持てば、現代においてはどんな投資やビジネスの失敗も本質的には死にたくなるほどのものとはとても言えないはずです。

なんでも起こりうる世界 その11

投資のヒントを得るために戦前のことについて書かれた書籍を最近多く集めていたのですが、例えば小説ひとつとってみても戦前生まれの人が書いた当時の物語と現代の作家が書く戦前の物語では細部に大きな違いがあります。


戦前生まれの小説家が書いた物語を読むと、ガリガリに痩せてボロボロの服を着た数多くの登場人物の描写が生々しく、いかに昔の日本が貧しかったかよく分かります。


一方、現代の小説家が戦前の物語を書いても同時代に生きた経験がないため、そういう細部のリアルな描写はできません。そのため何かもっと別なものを小説で表現しようとします。


結局、歴史を振り返ってみると、現代に生きる我々が間違いなく一番恵まれています。


仕事は巷に溢れており、食料品や衣料などの生活必需品は激安になり、招集状一枚で戦場に送られることもありません。


就職氷河期という言葉が出来て久しいですが、たかが就職の氷河期など氷河期のうちには入りません。本当に悲惨だったのは戦争世代です。


成年男子の二人に一人は徴兵され、うち五人に一人は死亡し、民間人にも犠牲者は出たため、総人口の3~4%は死亡しています。


当時は「あの人も死んだ、この人も死んだ」とリアルに近所話で話されたことでしょう。今の時代ではありえないことです。


つまり、自分の意思とは無関係に命を失った人々に比べれば、たかがお金を失ったことなど損失というのもおこがましい。

なんでも起こりうる世界 その10

暴落したときや万が一の出費にそなえて、余剰資金を持っている人は多いと思います。しかし、私の場合は常に全力投資なので、余剰資金は、ほぼゼロ。しかも今回のように危険な新興国通貨で中途半端なレバレッジがかかっている状態でした。


そういう状態でロスカットが起こるとどういうことになるかというと、所有している株式を値下がりしたドン底でブン投げないといけなくなります。


業火に焼かれる地獄絵図のような状態です。


含み益のたっぷりあった中国株や買ったばかりのロシア株を売り払い、当然日本株もバナナの叩き売りのように売らざるを得ませんでした。


ここ四年ほどで蓄えた株式投資の決済利益や含み益のほとんどすべてを吐き出し、丸裸にされたような形になりました。


ほんの一瞬の現れたZAR/JPYのレート7.592のために。


総資産に対するランド円のレバレッジは2倍にも達してなかったので、通貨の暴落による7.592なら対応できたかもしれませんが、業者のスプレッド拡大リスクを見落としてしまっていたことが、今回の失敗のすべてです。


例えるに、三国志演義の曹操軍なら、赤壁の戦いで大敗しても、北方に強大な地盤があるため、数年自国に引きこもれば、国力は瞬く間に回復するでしょう。


それに比べて、こちらは地盤とする土地もない黄巾賊の残党のような中年フリーターです。そもそもの兵力が過小な上に、一度でも大敗すれば、兵力の供給源はどこにもありません。


一時はすべてのやる気を失いかけました。

なんでも起こりうる世界 その9

小説三国志演義では、諸葛亮が祭壇を築いて祈祷して東南の風を呼び寄せたというような描写がありますが、実際のところは平生の気象観測から冬至前でもまれに猛烈な東南の風が吹くことがあることを知っていたとか、民間伝承ではドジョウを使って、東南の風の吹く日を予測したとか、諸説あるそうです。


なにはともあれ、季節外れの東南の風が吹き荒れて、呉の将軍、黄蓋はその風に乗って、枯れ柴や油を満載した偽りの降伏部隊を曹操軍の戦闘船の中に突入させます。


数珠繋ぎになった曹操軍の戦闘船は逃げることもかなわず、猛火は次から次へと飛び火して、壊滅的な打撃を受けることになりました。


曹操軍の失敗は、東南の風は吹かないという前提条件を信用し、完全にそれに寄りかかった布陣をしてしまったことにありました。


同じように私の今回の失敗は、リーマンショック級の不況がいきなりやってくるわけないという前提条件を信用し、完全にそれに寄りかかったポートフォリオを敷いてしまったことにありました。


ZAR/JPY 7.592というレートは、リーマンショックの最安値よりもさらに30pips下です。


つまり、リーマンショック以上のどん底になったのに、リーマンショックすら来ると思っていなかった私のポートフォリオは猛火に焼き尽くされる曹操軍のように壊滅的な打撃を受けました。

なんでも起こりうる世界 その8

小説三国志演義の名シーンの一つと言えば、曹操軍と劉備、孫権の連合軍が戦った赤壁の戦いです。


映画『レッドクリフ』は、ずばり赤壁の戦いを舞台にしたものでした。


荊州を併呑した曹操が勢いに乗って、80万と称する軍勢を江南の強国、呉へと差し向けます。


寄るべき領地を持たず、風前の灯火の運命にある劉備、その軍師である諸葛亮は、呉を魏との決戦に巻き込むため、単身南下して、呉の公論を動かそうとします。


詳細は、吉川英治著の『三国志』を読んでもらえばとってもおもしろい場面ですが、赤壁の戦いで勝敗を分けたものがあります。


それは東南の風。


北国育ちで、水上戦の経験に乏しい曹操軍は、疫病の発生に苦しみ、大小の戦闘船を鎖で数珠繋ぎにつないでしまいました。


これによって船上にあっても陸地にあるがごとく揺れがおさまり、兵士たちの健康回復に効果があったのですが、この方策には一つ大きな問題点がありました。


それは、数珠繋ぎになった戦闘船に火攻めを仕掛けられたら、壊滅的な打撃を受けるということです。


しかし、戦闘当時の冬至前は西北の風は吹くことはあっても東南の風が吹くことはない季節。


南方から攻め上がる呉軍が北方の魏軍に火攻めを仕掛けたら、わが身に向かって火を放つようなもの。


魏の大軍は安心しきって、戦闘船を数珠繋ぎにしたままでいました。

なんでも起こりうる世界 その7

シートベルトを締めていたら、死亡事故に至らなかったというケースが交通事故の中でかなりあるように、たとえFX業者が流動性の低い通貨で異常なスプレッドを提示しようとも、私自身がレバレッジ1~2倍で運用していれば、今回の件もロスカットされなかったことでしょう。


つまり、南アランドでもカブドットコム証券でなければ、異常スプレッドは配信されなかった。


あるいは、カブドットコム証券でも南アランド以外の通貨では異常スプレッドは配信されなかった。


仮にそういう不幸な事態が起こったとしてもレバレッジさえきちんと抑えておけば、一瞬の7.592というレートは何の事故も起こさなかった。


針の隙間を縫うように今回の事故が起こったように見えますが、知識と経験ある人なら、新興国通貨では異常スプレッドが出ることがあるとか、カブドットコムはカバー先が少ないから、値が飛びやすいということは常識だったわけです。


つまり、カバー先の多い信用できるFX業者を選ぶ、あるいは流動性の低い南アランドはそもそも所有しない、はたまたそれらを怠ったとしても命綱としてレバレッジは1~2倍に抑えておく。


これらのうちどれか一つでもクリアしておけば今回の事故は防げたわけです。


自分では突然予期せぬ方向から鉄砲玉が飛んできて命中したように感じても、今回の件はある種の人々には当然のように予期できた事態と言えます。


読む人によってはこの一連の記事も「アホな奴や」の一言で終わりです。


まとめとして今回起こったことを三国志の世界に例えてみたいと思います。(そんなことやってる場合ではないけれど……)

なんでも起こりうる世界 その6

8月24日早朝のランド円の暴落の局面では、FX業者の配信レートは、8円台後半から最悪だったカブドットコム証券の7円台まで格差がありすぎました。


つまり多くの人がそれほど深く考えていないだろうFX業者選びは、極めて重要ということです。


おそらくカブドットコム証券は、FXトレードに力をいれていないから、カバー先も少なく値が飛びやすいのでしょう。また値が飛んでも困らないような大口の外貨預金のような運用をしている人を想定しているのかもしれません。


「東京三菱UFJグループだから初めてでも安心!」


なんて、グーグルのアドセンスに口座開設の広告が出ていますが、こと今回の件に限って言えば、エロ動画配信サイト上がりの証券会社以下の信用力でした。


問題のある証券会社は過去に必ず何かをやらかしているので、履歴を遡って調べてみるべきです。


今回、株式を担保にFXトレードができる証券会社は限られていたので、FX業者選びの選択肢が狭まったのですが、株式担保というメリットのはずが全くの裏目に出ました。


また、業者選びとあわせて重要なのが、流動性の高い通貨を選ぶということです。


ドル円で、約15%近くもスプレッドが開くということが過去あったのかどうか確認できませんが、少なくともFXが一般的に個人に開放されたここ十年くらいではなかったのではなかろうかと思います。


つまり流動性の低い通貨をトレード対象に選ぶと、先日のスイスフランショックのように暴落で値が飛ぶリスクに合わせて、業者のスプレッド拡大で値が飛ぶリスクも背負うことになります。


同じ高金利通貨でも豪ドルのリスクは南アランドよりも低いでしょうし、ニュージーランドドルやトルコリラは危ないかもしれません。


大体、大惨事に陥るときには、複数の原因が密接に絡み合っています。

なんでも起こりうる世界 その5

「リーマンショック級の不況がそうそうやってくるわけない」


と胡坐をかいていたのは事実です。


もし仮に来たとしたら、SBI証券の方にある株式を出庫してカブドットコム証券に移管して追加担保にしたり、あるいは高金利通貨の新規の建玉は一切行わず、毎月の給料から株を買い、新たな追加担保にするということを薄々想定してました。


2008年1月頃に株式投資を開始したので、リーマンショックの経験はあります。やはりいきなり大不況になるのではなく、それなりの時間の経過はありました。


その間、スワップも細々貯まっていくだろうし、高値掴みさえしていなければ、なんとかなるだろうと……。


甘すぎる認識でした。


過去記事ではレバレッジ1倍なら安心だとか書いていながら、その後、ポンポンとランドを追加購入していき、直近の下落と株式の銘柄入れ替えで担保を外れていたものもあったりして、レバレッジは6倍まで上がっていました。


瞬間的に7.592にワープで虐殺されましたが、落ち着いて考えると証券会社のせいというよりは、自業自得です。


また値が飛ぶときには、逆指値など何の意味も持たないということを今回初めて身をもって知りました。


カブドットコム証券で、それなりのレバレッジを効かせて、ランド円を所有していた人はみなロスカットされたことでしょう。


もっともそんな人はFXトレーダー、投資家のほんの極一部だから、ニュースにもなりませんでした。


しかし、通貨と証券会社を変えて同じような事件は今後も起こることと思います。そういう約款とシステムでFXトレードが運用されているからです。


ではどうすれば、今回のような人身事故級のロスカットを防げるのでしょうか?

なんでも起こりうる世界 その4

追証の件でカブドットコム証券に電話したときのやり取りは以下のような感じです。


「うん。まあ言いたいことは分かるけど、当時相場が急落したときにカバー先から提示された価格があれだったんで、当社で人為的にレートを操作しているわけではないから仕方がないよね。それと、追証は明後日までに入金してね。ん?間に合わない。明後日を過ぎると、立替金に移行するよ。金利は発生しないけど、さらに期限を過ぎると、担保になっていた株式は適当に売却しちゃうから気をつけてね。じゃあ、よろしこー」


糞ドットコム証券、○ねばいいのに。


とはいえ、マイナー通貨の流動性の低下によるスプレッド拡大リスクを全く理解していなかった私にも大きな責任があります。


ネットの書き込みなどを見ると、カブドットコム証券はカバー先が少なく、頻繁に値が飛ぶことがよくあったそうです。


とはいえ、リーマンショック以後、シストレFXでランド円のBIDが7円台にタッチしたことは一度もありません。また仮にあったとしても、自分にBIDとASKの差まで深く観察する注意力はなかったと思います。


さらに、もう一つの私の落ち度は、株式を担保に過大なポジションを持っていたことです。

なんでも起こりうる世界 その3

書くまでもないことですが、ロスカットです。


しかし、その刹那には一体何が起こったのか理解できませんでした。


証拠金余力は十分にあり、到底ロスカットされるような価格帯ではなかったからです。


真っ白になったステータスを前にして、半ば無意識のうちに約定履歴を見てみると……


ZAR/JPY   7.592


「あっ!#$&!」


「やられた!でも7.592って、どうして?どうして?」


ZAR/JPYのチャートを開いてみると、9円を割った辺りで止まっています。


「…………」


「!!!」


反射的にBIDのチャートを出してみると、とんでもない下ひげが7円台に到達しています。


もうおわかりですね。


8月24日早朝のほんの一瞬、カブドットコム証券のシストレFXでは、ASK(買い)8.765、BID(売り)7.592とスプレッドが異常に拡大して、ロスカットされたのです。


ドル円に例えると、ASK115.00、BID100.00といったようにスプレッドが15円開いたようなインパクトです。


ちなみに南アランド円のBID(売り)7.592というのは、リーマンショック時の最安値よりもさらに下です。


つまり、世間では暴落といっても実はそんなに大した下落ではない中、「俺様だけひとりリーマンショック到来」状態に陥ったわけです。
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