もっともビジネスセンスがスバ抜けている人はこの罠には陥らないようです。


ホリエモンが全盛期の頃、「自分の収入は将来どうなるか分からないから、ヒルズのような賃貸でいいんだ」と言っているようなインタビュー記事を読んだことがあります。


監獄に入った経験さえ商売の種にしてしまうような人ですから、そんな心配しなくてもといった感じはありますが、センスのある人にはますますお金が集まる一方、それがない人は足りないお金をさらに失ってしまうという方向に向かうようです。


それともう一人、浮き沈みの激しい漫画業界で本宮ひろし氏というと、古くは『男一匹ガキ大将』、少し前には『サラリーマン金太郎』などなど、不沈艦のようにヒット作を出し続けているベストセラー作家です。


天然まんが家 (集英社文庫)
本宮 ひろ志
集英社
2003-01-17





その自伝的著作の中で、興味深いエピソードを見つけました。


氏は『男一匹ガキ大将』がヒットした際に貯まったお金で新宿区に十部屋ほどの学生アパートを有り金をはたいて買ったそうです。


けげんそうな顔をする妻に本宮氏はこう言いました。


「俺は、もう一生マンガを描けないかもしれない。自分のうちなんか六畳一間ありゃあいい」(p.169)


これは自宅が本質的には消費に属する資産であることを理解していてはじめて出てくる言葉です。


『サラリーマン金太郎』のTVドラマ化のために、個人で営業マンを雇ってTV局に営業かけたという話も載っており、漫画家としては異色のビジネスセンスを持っていたことが分かります。