あたかもベルリンの壁のごとく貴族と貧乏人を区切っていた境界線を叩き壊したのは、労働力の市場価値の向上でした。


現代だけしか知らないとこのことは非常に気づきにくいです。しかし、100年単位の歴史を観察すると火を見るよりも明らかです。


例えば女中について。昭和時代前期まで、多少裕福な中流階級の家庭には、女中がいるのが一般的だったそうです。




しかし、高度経済成長期(1970年くらいまで)を過ぎると、女中はほとんどその姿を消しました。各種工業化の進展によって、労働賃金が上昇すると、低賃金、長時間労働の女中の成り手がいなくなってしまいました。


もちろん洗濯機、炊飯器、冷蔵庫などの電化製品の普及によって、家事労働の時間が大幅に短縮されたことも女中が消滅した原因の一つですが、最も主要な原因は中産階級が女中を雇うのには、あまりにもその労働賃金が上昇してしまったことが原因です。


また、1960年代頃までは庶民金融の主力だった質屋も1970年代頃から、消費者金融の前身となる団地金融が起こり始めると、廃業するものが多くなりました。


今では街中で質屋を見つけるのは、天然記念物を見つけるように難しいですが、消費者金融の無人店舗ならいたるところに発見できます。


これはつまり豊かになって物品の溢れる現代では、ありきたりのものでは担保にならなくなった一方、仕事が溢れるほどあって、かつ人々が容易に失業しなくなったため、将来の労働収入を担保に取るほうが確実になったという世相の変化を受けた結果です。