完全に骨董品の域に達している唐本の値段がどんどん上がっているといっても、貧乏人の私には今も昔も縁のない世界の話です。


しかしどうも値上がりしているのは完全な骨董品と言える唐本だけではなく、今思い返すと普通の装丁の書籍まで値上がりしていたようです。


「本が再販されるたびに値段があがっている!」


と中国に留学していたときに中国人の同級生がブーブー文句を言っていたのを思い出します。


昔、私は中国の古典を学ぶ学問の徒だったのですが、中国の古典文献というのは、とんでもないくらいのボリュームがあります。


『源氏物語』や『枕草子』ぐらいしかない日本の古典といったら語弊がありそうですが、中国人にそういわれたら「まあそうかもね」と思ってしまうくらい中国の古典文献の豊富さは日本とは比較になりません。


正直言うと、日本が調子いいのなんて近代以後のここ百年程度のものです。彼我の古典文献の分量差は、過去の経済力の差を如実に物語っています。


別に中国を崇拝しているわけではないのですが、冷静に分析するとそう思います。


さて、中国では重要な古典文献は需要も大きいため、何度も何度も繰り返して出版社から再販されます。私はあまり気にもしたことはなかったのですが、確かに再販される度に値上がりしつづけていました。


そもそも何で気にならなかったかというと、日本円を中国に持ち込んで使う私からすれば、唐本みたいな骨董品は別として、中国の普通の本なんて相当安かったからです。