マネーの公理 スイスの銀行家に学ぶ儲けのルール [単行本]著者:マックス・ギュンター
出版:日経BP社
(2005-12-22)
『チューリッヒの公理』(邦題 マネーの公理)はさほど分厚い本ではありませんが、印象的なエピソードがたくさん出てきます。
まず冒頭を飾るのは、メアリーとシルヴィアという二人の若い女性のエピソードです。
仲の良い友人で同じような給与、資産状況で投資を始めた二人は、全く異なった投資戦略を実行します。
慎重なシルヴィアは元本が保証された上で、リターンを生むような銀行預金にお金を預けたがりました。
一方、大胆なメアリーはわずかばかりの資本がまとまった金額に育つように多少のリスクを取ることを望みました。
シルヴィアが暖かい毛布に包まれたかのように資産を増やしていく一方、メアリーは嵐のような相場の中で勝負に負けていました。
「ひどい、お金を四分の一も失ったなんて!」
シルヴィアは大人だったので得意げになったりはしませんでしたが、恐怖を覚えました。一方メアリーはシルヴィアに言いました。
「ええ、損を出したのは事実だわ。でも私が得たものも見て欲しいわ」
「シルヴィア、私は冒険しているのよ」
シルヴィアとメアリーの老後がどうなったかは本書を読めば分かります。
私は大胆なメアリーに非常な共感を覚えます。
私が普通のサラリーマンから滑り落ちたのも銀行の定期預金のように自分将来が計算できてしまったからです。
20年後、30年後、白髪交じりで禿げた自分がどういう仕事をしているかが分かる。奇跡のような成功などあるはずもない。
なんとつまらない人生か。
「ええ、ワープアになってしまったのは事実です。でも私が得たものも見て欲しい。私は冒険しているのです」
