史記の列伝部分は岩波文庫で翻訳が読めます。


人物の背景となるところの歴史が分かっていないと列伝部分だけを読んでも理解が難しいところはあるとは思いますが、翻訳で簡単に読めるのは助かります。


さて、司馬遷が見た王族でもなく高級官僚でもないただの庶民なのに大富豪になった人々とはどういう類の人々だったのでしょうか?


それは各種商工業や物資の交易によって利益を得た人々でした。さらにつけくわえるなら、逆張りオンリーの戦略を取る人々でした。


殷の紂王を討伐して、周の建国に功績のあった軍師、太公望が与えられた斉国の営丘は塩分が多い上に痩せた土地でした。


そこで太公望は、「こんな塩まみれの土地を領地にもらったって、碌な稼ぎになりゃしないさ」と嘆くことはせずに、逆に塩業を起こしたり、海産物を交易に出したりしました。


また痩せた土地の影響を受けない女性の手工業を発展させ、衣類、冠、履物などを生産することによって、斉の国は人や物資がひっきりなしに往来するようになり、大いに栄えました。


太公望は塩分の多い痩せた土地という不利な条件を逆手に利用して、斉国の経済成長を成し遂げました。