米国大使ハリスはほとんど素寒貧の状態で日本にやってきていましたが、この金銀交換比率のゆがみを利用して、散々儲けたようです。またこれは物価だけではなく、日本人の人件費も安いということにもなり、中国からつれてきた使用人よりも日本で囲った妾の法外な手当ての方が安いとかいった状態をハリスは満喫します。


外に向けてはボロ儲けし、内においては贅沢三昧をする外国人がいる一方で、物価が上昇し生活に汲々とする日本人。


外国人や幕府要人を狙った殺傷事件が起こり始めたのも、原理や理屈は分からなくとも、開国貿易が原因であることを直感的に理解した人々の行動でしょう。


結局、この混乱を収めて金の海外流出を止めるためには、金銀の交換比率を国際的な水準に合わせる必要がありますが、そのことが経済的には幕府崩壊の原因の一つとなりました。


つまりこれは小判の金含有量を3分の1にするか、一分銀の銀含有量を3倍にするかの二択になるわけですが、銀の含有量を3倍するほどの銀は日本にはなかったため、金の含有量が3分の1になった万延小判が発行されることになります。


これによって、1両は従来の3分の1の価値しかなくなり、物価は3倍にむけて急上昇することになります。物価の上昇を価格にすぐ転嫁できる商人はよいですが、それができない庶民や武士の生活は困窮します。


さらには金銀交換比率が適正なものになるということは、幕府もまた一分銀発行による莫大な利益を失うことになります。これが既に財政難に陥っていた幕府にとって経済的な致命傷となりました。


倒幕へむけて一挙に動き始めた時代の背景にはこのような経済模様がありました。