結局、老後の不安の本質は、「いつまでも働けない」というところにあります。


「労働力」というのが、貧乏人にとって最大の商品であるというのは、それが無形の商品であることと、「働く」という商行為が現代では余りにも一般風景化してしまったので、なかなか明確には認識しづらくなっています。


しかし、歴史をほんの少し遡れば、働こうにもろくに仕事のなかった時代があったわけですから、「労働力」の商品価値が飛躍的に高まったということは、よく歴史を観察していれば分かる事実です。


ところで、先日元猿岩石の森脇和成さんが芸能界に復帰するというニュースをネットで見かけて、「へえー」と思っていたら、何気なしに猿岩石の二人がユーラシア大陸をヒッチハイクで横断していたときのyoutubeの動画にたどり着きました。


なんとあの電波少年の企画はもう20年も前のことで、とすると今の若い人は、猿岩石自体知らなくて、有吉さんなんかはただのおもしろ司会者ぐらいにしか思ってないかもしれません。


さて、あの番組ではヒッチハイクをうたいながら、ところどころ飛行機に乗って移動していたりと、TV的な演出は多分にあったでしょうが、20年ぶりに動画で見てみると、「おやっ」と思うところがありました。


早々と最初に渡された所持金を使い果たし、着ていた服まで売り払ってしまい、ほぼ無一文になってしまった猿岩石の二人。


いくらヒッチハイクでも無一文では旅を続けられるわけないよなと思ったら、それからアルバイトを始めて、資金を稼ぐことで旅を継続し始めたんですよね。


「無一文でも労働力を売れば、旅ができるんだ……」(もっとも冷静に考えれば、不法就労ですけれど)


インドで稼ぐ金額と、ドイツで稼ぐ金額が十倍くらい違ったりとか、東欧ではなかなかアルバイトが見つからなかったりとかいったように、世界各国における「労働力」の商品市場が透けて見えます。


つまり、インドでは「労働力」が安くしか売れないが、ドイツでは高く売れる。一方、東欧では労働力の買い手自体が少ない。


働いている人間は変わらないわけですから、働く国がどんどん変わっていくことによって、労働力の売値や売れ行きが変わるのは、まさしくこれが商品の一形態であるということを認識させられます。


こういう番組を見る機会でもないと、日本が労働力を売りやすくかつそれが高く売れる恵まれた市場だということになかなか気づくことができません。


やっぱり私たちは恵まれています。