私一人が懐かしがっているだけで、ほとんどの人にとってはどうでもいい話題でしょうが、成都市の繁華街のメインストリートは春熙路というところで、動画に上がっていた風景がその近辺のものだったので、すぐに分かったのでした。


私がいた頃は、イトーヨーカ堂はありましたが、伊勢丹やユニクロはありませんでしたし、ファミリーマートのようなコンビニもまだ一軒もありませんでした。


ちなみに動画製作者の方が、「洋服が日本と変わらないくらいの値段だ」とか、「若者が高い服をバンバン買っている」と言っていますが、春熙路あたりは百貨店や衣料品店が非常に多いです。


10年以上前の留学中は私も服を買うときにはよく行っていたのですが、当時は「確かに日本よりも安いけれど、そんなに安くはないなあ」と思った記憶があります。


もちろん春熙路近辺の消費水準は高いので、普通の中国人はそういうところでは服を買わずに、もう少し品質の良くない服を安く買っていたのだとは思います。


しかし、今あらためて当時を振り返ってみると、私が中国の衣料品をそんなに安いと感じなかったのは、日本ではユニクロが既に衣料品の価格破壊を進行させた後だったからだと思います。ただ日本人で日本で生活しているとそのことに気づきにくい。


ユニクロが本格的に海外進出する前の頃の話だと思いますが、邱永漢さんの本に日本にやってきた台湾人や中国人がユニクロの服を安い安いと大量に買って帰るという話が書かれていました。


邱永漢さんが「ユニクロの服はメイドインチャイナですよ。それをお土産に買って帰るのですか?」というと、「いや、中国(台湾)にはないですから!」と答えるという笑い話のような話なのですが、実はこれが笑い話でもなんでもなく、ユニクロが海外進出する前から、すでにグローバルレベルでの価格競争力を持っていたということを如実に物語っています。


日本人よりも所得水準の低い中国人がわざわざ日本で買っていくということがその証なのですが、そのちょっと奇妙に見える現象に早くから気付けていれば、ファーストリテイリングの株を早くから買って、今頃は仕事なんかワープアでもなんでもいいやという状態になれていたのにと思います。


あまりにも身近に浸透しているものの価値に人はどうしても気づきにくい。数十年後、日本において高齢単身者が激増すると、老人ホームならぬ「ユニクロホーム」とでもいうような住生活環境の価格破壊が起こるのではないかと私は妄想していますが、仮にそういうものが日本で一般化しても日本人はその特殊性に気づかないかもしれません。