純文学風に川端康成の『雪国』の冒頭の一句、


「トンネルを抜けるとそこは雪国であった」


に例えると、


私がど田舎の田んぼの中の冷凍食品工場で見た光景は


「階段を降りるとそこは中国であった」


といったものでした。


初めての出勤日、現場入りしたものの、自分の仕事場が分からず、


「すいません。○号ラインってどこですか?」


と近くにいた人に後ろから尋ねかけると、何か様子が変だ。


「ん?……。あれっ」


よく見ると、名札が中国ネームです。早口で言った日本語なんて通じてなかったのです。


冷凍食品の工場の製造現場は、モジモジくんみたいな格好で、目だけ出しているような状態なので、パッと見では中国人か日本人かなんて分かりません。


しかし、改めてよく見ると、どこもかしこも若い中国娘ばかりです。下手すると、日本人よりも中国娘の方が多いんじゃないかと錯覚するくらい。


「なんだここは……。中国かよ」


工場内の注意書きがどれも日本語と中国語で併記されています。空港かよ(笑)


この田んぼの中の冷凍食品工場では、様々なことが起こりましたし、いろいろな話を聞きました。


グローバル化の波は私の住んでいるど田舎にも露骨に押し寄せていたのですが、私は単にそれを目の当たりにする機会がなかっただけなのでした。